Familiar Good UI (English title)

A container used in the bathroom

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シャンプー・コンディショナーの容器(資生堂:TSUBAKIしっとりまとまるMOIST)

日本在住の皆さんなら一度は見たことがあるであろう、シャンプーとコンディショナー(以下リンス)を入れている容器。今回はこの容器に焦点を当ててGood UIについて説明をする。

これは一般的にシャワー中に使われるものだ。上のポンプを押すと一定量のシャンプー・リンスが出てくる。この時、使っている人は水にぬれているか何かで周りが見にくいことがある。もしくは視力が悪くこの容器に顔を近づけないと自分が何を手に取っているかわからないことがある。ここで登場するのが私が今回最も紹介したいGood UIだ。実はこのシャンプーの方のポンプ部分と容器の両側面の部分に突起がついている。これによって、触るだけでシャンプーなのかリンスなのかがわかるのだ。これは目が見えていないときに最も有用なデザインである。

他にも、ノズル部分の色の違いや、容器自体の色の違いによって区別することもできる。これは目が見えているときに有用なデザインだ。しかし、シャワー中は水が顔にかかって目が明けにくかったり、普段眼鏡だった人が眼鏡をはずしている状態で視力が悪かったりすることがあるので、目が見えにくい状態であることが多い。つまり、視覚ではなく、触覚に頼って認知をする突起を用いたデザインは使う場所、使う人に寄り添ったデザインである。またバリアフリーなユニバーサルデザインでもある。

ここで、シャンプー・リンスをシャワーの時に区別できればいいのであればポンプだけに突起をつければよいのではないのか?なぜ側面にもついているのか?という疑問が生まれるだろう。確かにシャワー中はそれで足りるだろう。しかし、内容物の入れ替えなどを行ったとき、容器とポンプは対になる必要がある。目が見える人であれば、容器を見て確認してそれに対応するポンプをつけれるが、見えない人は対応させることができなくなってしまう。つまり、側面の突起はユニバーサルデザインの要素が大きいが必要なデザインなのだ

物理的制約

日本のシャンプー・リンスの容器には物理的制約がある。ポンプの形状から考えられるノズル部分を押すということ以外のことができない。しかも、押しても出てくる量は一定で、出しすぎてしまうなどのエラーを起こしにくい。例えば中国ではシャンプー・リンスの容器はチューブタイプの洗顔料のようにふたを開けて押して使う形の容器がある。このような容器だと押したときに出てくる量は一定ではなく思ったよりも出しすぎてしまうようなことがある。日本の容器ではこのようなことも制約されるのでエラーが発生しにくい。

シグニファイア

シャンプー・リンスの容器が区別するために与えるシグニファイアがある。それは触覚によって認知される突起と、視覚によって認知される色だ。普段、目が見えているときは容器の色によって内容物が違うことを示されているのがわかるだろう。しかし、これだけでは本当に必要な時に区別するには足りない。なぜならこの容器を実際に使うのは浴室で、浴室はシャワーを浴びるところだ。普段眼鏡やコンタクトをしている人は共感できると思うが、シャワーの時眼鏡やコンタクトをはずすので何がどこにあるのか視覚で認知するのは難しい。また、水にぬれて目をつむったままシャンプー・リンスをとろうとすることもある。この場合は完全に周りが見えなくなる。この時突起という、触覚によって認知されるシグニファイアがあること、またはないことで、区別をすることができる。ただし、これは突起がついているのはどちらなのかはっきりと覚えていなければならない。もしここが曖昧だったり逆であると、知識ベースのエラーが発生してしまう。視覚を奪われることで起こるエラーを防ぐための機能なので、知識ベースのエラーは使う相手に頼るしかない。この突起のたった一つのことを覚えるだけでエラーはぐんと減らすことができるのだ。

バリアフリー

この容器はバリアフリーのデザインとして設計されている、と聞くことが多い。私も確か初めて知った時はそのように勉強した。しかし、実際このデザインが生まれたのは容器を使う人の多くがシャンプーとリンスをとり間違えるエラーを起こしてしまうために、化粧品会社にどうにかしてほしいと頼んだからである。つまり、普段見えている人、見えてない人関係なく、間違えやすいデザインであるということだ。そこで、考えられたデザインがシャンプーの容器に突起をつけることだった。視力が奪われた状態で認知するために触覚を使った。これが視覚障害者のためのデザインでもあった。始まりがバリアフリーなのではなく、ユーザーに快適に使ってもらうために生まれたのがバリアフリーであったのだ。バリアフリーの商品はだれにでも使いやすい傾向にある。なぜなら使うために必要な能力が少ないからだ。